1月3日の夜11時30分,依頼の電話が来た。
依頼のブツは大したことないが,目的地が大変だった。
今回の目的地は苫小牧。
ブツは・・・
ハセガワストアのやきとり弁当(中) (注1)
今回の依頼を遂行するかどうかは,ある程度俺の一存に任されていたが, 俺は遂行することに決めた。
俺が家を出たのは4日の0時ちょうど。
依頼人の情報だと,路面状況はほとんどドライ。
バンバン,踏んで来れると言っていたが,八雲あたりから怪しくなってきた。
長万部市街に入ると,吹雪いてきたのだった。
俺は迷ったが,高速を使うことに決め,その準備のために,SSへより給油と,空気圧の確認をした。
高速に入ってから,吹雪はMAXになり,
視界が80mもなく道路は雪が降り積もっていた。
しかも,俺の車は
AE86トレノ(FR)
こんな状態ではまっすぐには走れない。
俺は,安全を守るため時速100km程度のスピードで走り続け,
唯一安心できるトンネルにはいるとめいっぱい踏み込み時速180kmの世界を堪能していた。
こんな調子で走り続けた俺に,神は第1の試練を与えた。
相変わらず視界の悪い中を走り続けていると,前方60m位のところでぼんやりとした赤い光が見えた。
俺はすぐに気が付いた。テールランプだ。俺は,ブレーキを踏んだ。
すると,どうしたことだ?
前方の風景が横に流れるではないか。
ヤバイと思った俺はブレーキペダルから足を離し,
小刻みにカウンターを当てながら態勢を立て直し,
エンジンブレーキを使いながら前の車との車間距離を徐々に広げていった。
そんな吹雪の中の走行を続け,伊達ICに近づいた。
この当たりにさしかかると,さっきまで吹雪いていたのが嘘のように晴れていて,
路面状態も100%ドライになっていた。
ここまでくると,苫小牧まであと少し。俺は,路面が少しバンピーなのも気にせず,
思い切り踏み込み苫小牧西IC間で180km/h走行を続けた。
無事ICを降り,左にウィンカーをあげ曲がったときに少し違和感を覚えた。
何となく,曲がりづらかったのだ。
しかしその後の直線で何ともなかったので,俺は気のせいだと思いコンビニまで走り続けた。
しかし,これはかなり前から与えられていた第2の試練だったのだ。
コンビニに到着し,車から降りた俺は依頼人に電話を入れた。
依頼人達はこともあろうに眠っていたのだ(眠っていて当然だ。俺が来るとは思ってもいないだろう)。
俺は,
「今,まだ函館にいる。もう遅いから今回の件はなかったことに。」
と電話で嘘をついた。
そのときである。
また乗り込もうとした車の右フロントタイヤに異変が起きていることに気が付いた。
右フロントだけつぶれているのである。
何処からこうなっていたのであろうか?
わからないが,高速を走行中になったことは間違いない。
俺は良くこんな状態で180km/hも出したものだと自分が恐ろしくなると同時に,
こんな状態でも走れるんだと変に感心してしまった。
取りあえず,俺はタイヤをこのままに依頼人の家へと向かった。
俺は安心して眠っている依頼人達を電話でたたき起こし家へと入った。
このとき俺はブツを渡し,
「じゃっ!」
といって帰ろうという体を張ったネタを考えていたが, タイヤパンクで多少気が動転していたのだろう。 ネタをやらずにすんなりと家へと入ってしまった (といってもタイヤがこの状態じゃ帰りたくても帰れないのだが)。
依頼人達は酒という報酬を用意して迎えてくれたがこれがヤバかった。
何種類かあったのだがまずは実験用のアルコールのにおいがするRED。
味もアルコールっぽかった。
何処の酒かは知らないが十数年もののウィスキー。
極めつけは,紙パック入りの日本酒。
ウィスキーについては隅で埃をかぶってかなり前に開封されたOldの方が数倍うまかった。
日本酒もグラスについでもらったがにおいからしてまずかった。
そのとき俺はこのにおいを「米麹のにおい」とこのとき表現したが,
今になってなんのにおいか思い出した。
みんなも嗅いだことがある,あの白く濁った液体のにおいだ。
そう,米のとぎ汁のにおいだ。
俺は,なめる程度でグラスを置き,あとは依頼人達と馬鹿話をして寝た。
4日の午前,俺達はごろごろして,昼になってから,タイヤの修理+昼飯のため家を出た。
その後午後2時近くに家に戻ってきて,タイヤを元に戻し,俺は苫小牧をあとにした。
帰りもまた高速に乗り帰ろうとしたが,
途中,白黒ツートン&赤ランプをつけたペースカー(110km/h走行)や,
50km/h制限を50km/hで走る(間違いではないがとんでもない)一般ペースカーがいたので,
タイヤの状態を見たり伊達で寄り道をしてペースカーをさけ帰った。
長万部ICでのことである。
料金所のおっちゃんが
「いや〜バイクが降りてきたと思ったよ。」
と訳のわからんことを言ってきた。 俺は「は?何言ってんだ?おっちゃん。」と思ったのだが, おっちゃんが
「助手席側のライト切れてるよ。」
とすぐに説明してくれた。
俺はおっちゃんに礼を言い,その場を立ち去り,
「かなや」(注2)
の駐車場で確かめた。
確かに切れている。
しかし,ドライバー側でなくて助かった。
ドライバー側だったら無理な追い越しをかけてきた車と,オフセット衝突でもしかねない状況だ。
「また命拾いした。」と思いながら,安全運転で函館へと向かった。
ちなみに,今は2色の色が出るバルブに換えました。
(文責:Taku)
(注2)
長万部の国道5号線沿いにある,大型のドライブイン。
北海道の人間にとっては非常に有名な場所である。
函館−札幌間を車で移動するときは,みんな必ずと言っていいほどここに立ち寄る。
トイレが大きく,綺麗なので,トイレ休憩にはもってこいである。
(余談)
北海道の人の距離感覚には脱帽します。
「車で2時間の距離」は「近い」「すぐ」の部類に入るのです。はじめは正直言って驚きました。
(まあ,山杜も北海道長く住みましたので慣れましたが・・・)
ですから,「苫小牧まで弁当持ってきて」と頼まれて,出かける感覚って凄いです。
函館−苫小牧は,ごく普通に走れば5時間はゆうにかかります。
本州に住んでいる皆さん,「ちょっと出かける」感覚で,車で5時間の所に行けますか?