「ギアすぱすぱ事件・in太櫓」


 山杜の内輪では,何かにつけ話のタネになる事件です。 今回は,この事件の当事者である,みっつ氏が当時の模様を書き起こしてくれました, ギアすぱすぱ事件・in太櫓をお送りいたします。


 そう,あれは忘れもしない大学3年目のゴールデンウィークの最終日だった。 その日,からのTELでドライブに行くことになった。 メンツはKeitaShibuそして,俺(みっつ)の4人だ。 (確かTakuはTVを買いに行くとかで居なかった。) どこへ行こうかと相談しているうちに,

「北檜山にスゲーいいキャンプ場があるんだけど,夏休みにでも暇を見つけていってみねぇ?」

と言いだし,

「今からそこへ下見に行こうぜ!」

ということになり,北檜山の方角へと車を走らせていた。


 の車に乗ってすぐに,が前に車の調子が悪いと言っていたのを思いだし, に車の調子を来てみたところ,

「今日は何かスゲー調子がいいんだよ, クラッチ踏まなくてもギアがすぱすぱ入るんだよ!
(前はギアの調子が悪かった)

と言うので,みんなで

「スゲー調子がいいじゃん! 何か今日は絶好調だな!」

などとタワケタこと言いながら,和気藹々としていた。


 途中,

「そー言えば,入ったことないけど前からこの道,気になっていたんだよな」

の一言でサクッと脇道に入って行くことも多々あったが, その日のみんなは妙な盛り上がりのせいか, 今日でGWが最後だからという気持ちからかは分からないが,

「おー,スゲー気になっていたよ」

などと同調し,反対する者もなく, これから入っていくミステリーゾーンへ期待を膨らませていた。


 何回か脇道に入ったがその内の一つは山奥へと続き,

「アイヌネギありそうだな」
(山杜注:「アイヌネギ」とは正式名を「ギョウジャニンニク」といい, 北海道にのみ生える山菜である。匂いは強いが大変美味)

などと言いながらどんどん奥へと入って行った。 奥の方へ行く途中,野ウサギを発見した

「ウサギだ!」

と叫ぶと同時にアクセル全開! 野ウサギを追いかけはじめた。 みんなも

「うぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」

などと歓喜の雄叫びを上げ,必死に逃げる野ウサギの姿をみて盛り上がっていた。 野ウサギは草むらの中に消えていってしまったが,それでもなお奥へと進んでいく。 まるで何かに取りつかれたかのように・・・。


 どのくらい来たのだろうか。 かなり奥へ入ったところで,先日のの車の調子の悪さを思い出してしまい, 思わず

「こんなところで車止まったら,シャレになんねーよな・・・」

と口ずさんでしまった。 その言葉を聞くなりみんな「引き返そうモード」になり, Uターン場所を探し引き返すことになった。 幸い心強いことにUターン場所で1台の車を発見し,

「何かあったらこの車に助けを求めよう!」

などと大変迷惑な作戦を立てながらも無事に引き返すことに成功した。


 今思えば,このときすでに嫌な予感はしていたのだ。 だが,その場の異様な盛り上がりのせいか(?), 危機(山中で遭難!?)を脱出したという安堵感のせいか(?) は分からないが正常な判断力が欠けていたのだろう, そのまま,一路北檜山へと再び車を走らせたのであった。


 俺達は車に対して不安を抱きながらも,まっすぐに目的地である北檜山のキャンプ場を目指した。 江差に入り,交差点を右折し,乙部の海浜公園を左手に見ながら, いつも釣りやドライブ等で知っている道なので, 特に景色にとらわれることもなくまっすぐ進んで行く。 乙部に入ってどのくらいたったのだろうか,右前方に 「乙部温泉」 と描かれた看板を発見した一同は,

「帰りにここの温泉に入っていこうぜ!」

などと話し合い,帰りの計画もバッチリ立ててあった。


 道中とても楽しかった。

「ゴンタク〜ン」

「ウォウォウォ〜〜〜〜」

「タイガーマスク!,タイガーマスク!」

などと訳の分からないことをいいなが気がついてみれば, 左折する目印であった 太櫓 の看板が見えてきた。


 太櫓 の看板を左折し,右前方に見える海岸線に感激しながらさらに進んでいくアコード。 海岸線を後にし進んでいくと住宅地の中に入ってきた。 住宅地と言っても細い道路のまわりに家々が建っているだけの路村で, 見た感じ人影も見えなくとても寂しい雰囲気が漂っていた。


 しかし,一同はそこの場にそぐわないログハウス風の洒落た建物に目を奪われた。 後に学校と判明した建物に誰が助けられることを予想しただろうか? いやない(反語)


 太櫓の小さな町を抜けキャンプ場へと向かっていく。 キャンプ場は小高い丘の上にあり, そこへ行くためには当然のごとくけっこう急な坂を上っていかなければならなかった。 坂を上り終えると, そこにはまたしても太櫓という地名からはとうてい想像することができない, 不思議な空間が広がっていた。


 なんと!そこは別荘地であったのだ! 見た感じで直ぐ分かるいかにも別荘という建物が何軒も建っている。 中にはプール付きの別荘なんかもあり,

「たしかに,夏になったらここはとてもいい場所だ」

と言う誰が言ったのか分からない言葉にも思わず納得してしまいそうである。 別荘にはまだGWということもあり,全て無人であったのは言うまでもないだろう。  別荘群を抜け少し進んでいくと,ようやくキャンプ場が見えてきた。 一同が一番最初に目にしたのはバンガローであり,

「あっ,これがあればテントがなくてもキャンプができる」

と誰しもが思ったことだろう。 (ホントか,オイ!) バンガローは帰りに詳しく見ることにして先へと進んでいくと丁度, 管理棟見たいな物が見えてきてそこで道が終わっていた。


 管理棟にはこれまた当然のごとく(?)誰も居らず,

「いつオープンするんだよ!」

という疑問が残るが,これはあとでTELして聞いてみようと言うことで一件落着した。 (えっ!) キャンプ場は小高い丘の上にあるせいで,見晴らしは大変すばらしく,みなの期待を一層膨らませた。 しかも,キャンプ場自体も大変きれいで

「夏になったら絶対来ようぜ!」

と管理棟の前で堅い誓いを交わす一同であった。


 全体を軽く見ていよいよ帰ることになったが,

「帰り際にバンガローを見ていこう」

と言っていたので早速バンガローに向かっていった。 バンガローも大変よく,直ぐ前に釜戸なんかあったりして

「ここで焼き肉できるなぁ〜」

などと盛り上がってしまった。


 あまりのんびりしていると帰函するのがおそくなるので,一同は函館に向けて出発する事にした。 キャンプ場を後にし,別荘をジロジロ見ながら, 来るときに上ってきた坂に差し掛かったまさにその時,悲劇が始まろうとしていた。


 丁度坂に差し掛かったとき,俺はその異変に気づいた。 (俺だけではなくKeitaもその異変に気づいていたようだ。) 坂道のせいではっきりとは分かりづらかったが, タコメータの指すエンジン回転数にしては速度が遅いように感じ, しかもそれと同時に何かが焼け焦げたような臭いが車内に漂ってきた。

はこの異変に気づいているのか?」

そう思い俺はふとの顔を見たのだが,何が起きているか気づいていないのか,平然としていた。 ここで,にこの異変を伝えようと思ったのだが,

「今日は車の調子がいい!」

という言葉と,この楽しい雰囲気に水を差したくはないという思いから (どんな思いだ!) に言い出せず,不安を自分の胸にしまっておくことにした。


 しかし,坂道を下りきったところで俺の不安は現実のものとなった。 明らかに,速度が落ちてきている! も感覚的にそれを感じ取ったのか,アクセルを深く踏み込んでいく。 タコメーターの針が上がっていくことでそのことが分かる・・・。 そして,ついにKeitaが禁断の言葉を口にしてしまった!

「なんか,スピード落ちてきてねぇ?」

「やっぱり落ちてきているよなぁ」

「アクセル踏んでもスピードがでねぇんだよ・・・」


 ついに止まりそうなスピードになってしまったので, みんなで相談し一度車を止めて再発進を試みてみることになった。 ブレーキングをしてきっちりと車を止める。 それを不安に見守っている一同。 車が止まったところで再発進をしてみる。 まず,ゆっくりとアクセルを踏み込んでいき, つぎに丁寧にクラッチをつなごうとする・・・が,失敗。 再び試してみようとするが,またしても失敗。 一同が絶望に打ちひしがれているとき,がトドメの一言をボソリとつぶやいた!

「全然ダメだなぁ。 だってよぉ,ギア入れたままでクラッチもアクセルも踏んでいないのに,エンストしねぇんだよぉ」

「な,な,なんだと〜ぉ!」

もう終わった。


 とりあえず,みんなで相談してJAFに連絡をとってみることになった。 車が止まった場所は幸運にも民家 (のちに中村さん宅と判明) の真ん前だったので,そこの家でTELを借りることにした。 ピンポ〜ン。 おばあさんが出てきた。

「すみません。車が止まってしまって,動かないのでJAFに連絡取りたいんですけど, 近くにTELがないので,TEL貸していただけますか?」

とても丁寧にお願いしたところ,快く貸してくれた。 中村さんありがとう! しかし,JAFにTELしてもそこは管轄外だから無理とのこと。 一同はJAFがこれない場所だと聞き,ショックの色を隠せずにいた。


 そこで,困ったときは警察! ということで警察に掛けてみるが当然ダメ。 今考えると何故警察に掛けたのかは疑問なのだが,その時は警察なら何とかしてくれそうな気がした。 次に,中村さんに地元の修理工場のTEL番号を教えてもらい掛けてみたのだが, 全然出てくれない。 中村さんの話だと,

「あ〜,飲みに出ちゃってるねぇ〜」

とのこと。 こんな時間(6か7時だったっけ?)から飲みに出るな〜!と怒り狂う一同だった。


 JAFも修理工場も警察(?)もダメとなり, 一同はもう誰か仲間を呼ぶしかない!という決断を下し,TakuへとTELをすることに。 (まっ,Takuがいなかったら山杜だったんだけどね!) TakuにTELしたところ来てくれることになり, 場所を説明するために俺がTELに出た。

「う〜ん,場所はね〜乙部も熊石もずっと超えてくると,太櫓という看板があるからそこ左。 そして,真っ直ぐ来るとログハウス風の学校があるからそこにいる」

お〜なんという簡潔かつ分かり易い説明なのだろうか!(?) しかし,Taku太櫓という地名は当然のごとくしらない。 そこで,字の説明をする。

「ふといという字に,木へんに上が魚で下が白」

これで,場所も太櫓という字も完璧だ。 (ホントかオイ) とりあえず 太櫓の看板左」 ということだけ確認してTELを切った。 一同は中村さんに丁寧に礼をして車へと戻った。


 道に車を置いておくと邪魔なので,みんなで押して空き地まで運んだ。 待っている間とても暇で海に行ったり,学校見物に行ったりして暇つぶしをしていた。 腹も減ったので近くの店へ食料調達に行くがとにかく何も無い!

「おまえ,いつのパンよ!」

というパンがゴロゴロしている。 しょうがなく食えそうなものを買って食い,一同は飢えをしのいだ。


 車が来る度に敏感に反応し確認に行くがどれもTakuではない。 いい加減一同は疲れ(飽き?)始めていた。 どのくらい待ったのだろうか?ブウォン,ブウォン!彼方からエキゾースト音が聞こえてくる。 一同はそれを聞いたとたん,

「あっ,Takuだ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

急いで車外に出ていき助けに来た仲間を迎えに行くのであった・・・。


 帰り道のことはあまり覚えていないのだが, 車の窮屈さとコンビニで買った弁当の味は一生忘れないであろう。


 後日談になるのだが,車は一週間ほど放置された。 後にKeitaで,Keitaの車検の代車 (2,300kmしか走ってしない,しかも車屋の社長の車で,代車専用の車ではない) を使って,太櫓に車を取りに行ったらしい。 そこで何をしたのかは忘れた。


(文責:事件当事者・みっつ)


P.S 途中で飽きてしまい最後が雑になったが許してくれ!


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