【今更ながら,馬場さん還暦おめでとう!】


 「世界の巨人」ジャイアント馬場選手が,1月23日で還暦を迎えられました。 60歳といえば,一般社会では定年退職の歳であり,老人への仲間入りをする歳であります。 しかし馬場さんに至っては,今なお現役。 本人の口からも「まだまだやれる」という言葉が飛び出しています。 長州や前田,猪木といったベテランレスラーが次々と引退を口にする中, 馬場さんだけはその2文字を口にすることなく,ついにこの金字塔をうち立てたのです。 あの「故・ミスター珍」さんですら,引退とカムバックを経験しているのです。 馬場さんがどれだけ凄いことを成し遂げたか,ひしひしと感じられます。

 なんかこう書くと,引退が悪いことのように聞こえてしまいますが,そうは言っていません。 引退を表明するレスラーは,力が衰えてまで現役でいたくない, あるいは,トップレスラーのままで現役を去りたい,という気持ちがあるのだと思います。 世代交代の影響もあります。それはそれで美学だと思いますし,否定はしません。 ただ,1度引退を表明したならば,戻ってきて欲しくないなあ,と私は思います。 プロレス界では,カムバックが当たり前のように思われています。 でも,このことが,プロレスがいつまで立っても色眼鏡で見られてしまう一因ではないかと思うのです。 川田選手はこう言います。 「もし自分がやめるときは,『引退』じゃなくて『休業』にしておいてほしい」 私が昔から思っていたことを,言ってくれました。

 閑話休題,話を馬場さんに戻します。 馬場さんの場合,たとえ第一線で試合できなくなっても, 決して引退を口にせず,リングに上がり続けてきました。 見に来てくれるお客さんがいる限り,自分にできる最高の試合をする,それが馬場さんです。 リングの上だけではありません。地方会場では,いつもグッズ売場に馬場さんがいます。 ファンは,そこに馬場さんがいるだけで安心し,「全日本を見に来たんだなあ」という気持ちになります。 決して気取らず,目立とうとせず,お客さんのことを考え,コツコツとできることをやってきた馬場さん。 その積み重ねが,還暦現役レスラーを作り上げたのです。 おそらく,馬場さんはこれからも,同じようにコツコツとリングに上がり続けていくことでしょう。

 先日,プロレスにはさほど詳しくない友人に,馬場さんが還暦を迎えた話をしました。 すると友人は, 「なんかこの間,猪木が引退試合をやるって話聞いたけど,馬場はまだ引退しないの?」 と聞いてきました。そこで私は, 「馬場さんは絶対に引退しないから,引退試合は無いよ」 と答えました。その友人がどういう意味に捉えたかは分かりません。 私のこの言葉の真意は,皆さんのご想像にお任せします。しかし皆さん,考えてみて下さい。 猪木の引退試合は想像できても,馬場さんの引退試合って想像できないと思いません?

 「馬場伝説」 終わりの見えないこの物語は,還暦をひとつの節目として,まだまだ続いていくことでしょう。 何はともあれ,ジャイアント馬場選手,還暦おめでとうございます。 1人のファンより,僭越ではありますが,お祝いの言葉を述べさせていただきました。

(文責:山杜一平)


    戻る